2016年12月 5日

国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)は、「責任投資規制に関する国際ガイド(仮訳)(Global Guide to Responsible Investment Regulation)」と題するレポートを発表した。世界各地の責任投資政策や規制を分析し、政策決定者、投資家、証券取引所の声を聞いて、規制の効果を探った。調査結果は以下の通り。

・責任投資政策は急速に普及しており、GDP上位50国では、年金基金ルール、スチュワードシップ・コード、企業情報開示ルールなど合計300近い政策が施行されている。そのうち半数は2013-2016年に導入されている。
・責任投資規制が導入されている国では、企業のESGリスク管理が進んでいる傾向があり、規制の効果が裏付けられている。
・しかし、監視の不在や、政府省庁と規制機関の間での温度差などの問題のため、規制の効果について投資家から疑問視されている。
・ほとんどの政府は、パリ条約やSDGsなどのESG目標と金融制度のリンクを認識できていない。中国やEUでは最近この点の検討が始まっているが、これまでESG目標達成のために機関投資家が果たすべき役割について明示した政府はない。

PRIは、ESG規制の制定に際し、ESGが任意オプション扱いされていることが多いと指摘する。同レポートでは、調査の結果を受けて以下の提言を行っている。

政策決定者への提言:
・SDGsなど持続可能性目標達成のため資本市場が果たすべき役割の明確化
・資本市場と持続可能な経済の関連性に関するエビデンスの集積
・責任投資政策の強化
・監視の強化
・企業ESG情報開示の義務化
規制機関への提言:
・ESG関連の権限の明示
・責任投資実施状況監視強化に必要な人材・技能の養成