2020年1月20日

国際決済銀行(BIS)は、気候変動がもたらすリスクに対して、中央銀行や規制・監督機関が金融安定化のために果たすべき役割について検討したレポート「グリーン・スワン(The green swan)」を発表した。

気候変動は、金融の安定にとって大きなリスクである。しかし、絶えず変化する物理的、社会的、経済的な現象による大きな不確実性や複雑な連鎖反応のため、金融安定のモニタリングに気候関連のリスク分析を組み込むことはかなり難しく、従来型の過去の経験に基づくリスク分析や既存の気候・経済モデルではリスクを十分正確に予測することはできない。同レポートでは、このようなリスクを「ブラック・スワン」理論(注)になぞらえ「グリーン・スワン」リスクとよび、次なる世界的な金融危機を引き起こす可能性のある、金融面での破壊的な事象であるとしている。

中央銀行はこうした事態を避けるため、将来を見越したシナリオ分析の開発により気候関連リスクをより詳しく理解できるようにするなどの役割を果たすことができる。しかし、中央銀行だけで対処できる問題ではなく、政府、民間セクター、市民社会、国際社会等、多様なアクターが共に取り組むことが必要で、その調整役を担うことも求められる。施策としては、カーボン・プライシング、財務や会計フレームワークへのサステナビリティの統合、最適なポリシー・ミックスの追求、国際レベルでの新たな金融メカニズムの構築などが考えられる。いずれも足並みをそろえるのは大変な課題だが、長期的な金融安定を保つためには必要不可欠であると同レポートは指摘している。

(注)「ブラック・スワン」は、ナシーム・ニコラス・タレブ氏が2007年に提唱したもので、金融市場において、確率論や従来からの知識や経験からは予測できないことが発生し、その事象が人々に多大な影響を与える場合を指す。