2018年3月 7日

国際労働機関(ILO)は、タイの漁業および水産加工業の労働環境について調査結果をまとめた報告書、「タイにおける漁業および水産加工業の労働者に関するベースライン調査結果(仮訳)(Baseline research findings on fishers and seafood workers in Thailand)」を発表した。

同報告書は、欧州連合(EU)が資金援助したILOのプロジェクト「Ship to Shore Rights Project」がタイにおける漁業と水産加工業の両方について初めて詳細に調査した結果をまとめたものである。タイの漁業および水産加工業における強制労働や児童労働及び不適切な労働形態を減らし、特に移民労働者に向けた労働者の搾取をなくしていくことがプロジェクトの目的である。

同調査には、2017年にタイ11州の様々な規模の雇用主の下で働く移民労働者を中心とした434人を対象に実施したインタビューの結果も含まれる。同インタビューでは、求人慣行や賃金、労働時間、安全衛生、福利厚生、苦情処理、生活環境、強制労働に関する指標、法令順守レベルなどを調査している。

主な結果は以下である。

改善した点(2013年にILOが実施した漁業に関する調査の結果との比較を含む)
・暴力の報告が減少
・18歳未満の労働者が減少(1%以下)
・43%の漁師が書面による契約を交わしており、4年前より改善
・漁師の控除前賃金の平均が上がっている例があった

継続的な課題
・34%の労働者への控除前賃金が最低賃金を満たしていない
・52%の女性労働者への賃金は、法定の最低賃金を満たしておらず、性別によるギャップが大きい
・漁師の24%で船舶所有者による賃金の保留があり、12ヶ月に及ぶ例もあった
・34%が本人確認書類にアクセスできなかったと報告

報告書はタイ政府や雇用主団体、労働組合、市民団体、グローバルなシーフード・バイヤーなどに向けて、法的枠組みの強化とその確実な執行と、業界のディーセント・ワークへの取り組みを提言する。