2019年10月 7日

英シンクタンクのカーボン・トラッカーは、東京大学未来ビジョン研究センターとCDPジャパンと共同で新しい報告書「日本における石炭火力発電の座礁資産リスク」(英題:Land of the Rising Sun and Offshore Wind)を発表した。報告書は、日本で現在計画中及び運転中の石炭火力発電所は、再生可能エネルギーのコスト低下に従い設備利用率や電力料金が低下することで座礁資産化するおそれがあると分析し、2℃未満シナリオの場合その資産額を710億ドルと試算した。

報告書では、日本国内の新規・既存の石炭火力発電所についてそれぞれのファイナンスモデルを用いて相対的な経済性の分析を行っている。その結果、2018年実績の設備利用率は74%、電力料金87ドル/MWhであるが、仮にそれぞれが48%以下または、72ドル/MWh以下となれば石炭火力発電所の事業性が失われることが明らかになった。

また、陸上風力、洋上風力、商業規模の太陽光発電は、それぞれ2025年、2022年、2023年には、石炭火力発電よりも安価になる。さらに、石炭火力の長期の限界削減コスト(LRMC)は、2025年には太陽光と洋上風力より、また2027年には陸上風力よりも高くなるという結果を得ている。

なお、2℃未満シナリオでは、日本の石炭火力発電所は全て2030年までに閉鎖しなくてはならず、政府がすみやかに発電所の計画・建設中のプロジェクトを再検討・中止した場合、想定されている座礁資産リスクの710億ドルのうち少なくとも290億ドルは回避可能であるという。石炭からの転換推進は投資家、消費者、さらに経済全体にとってよいことであるとして、計画・建設中のプロジェクト中止と既存の発電所の廃止を訴えている。