2018年1月30日

世銀は「世界の富の推移2018」を公表、世界全体の富は大幅に増加したものの、一人当たりの富が減少もしくは変化が見られなかった国が20数ヶ国あったことを指摘している。OECD加盟国の高所得国と低所得国の格差は依然大きく、国民一人当たりの富は52倍の開きがある、と分析している。

同報告書の大きな特徴としては、GDPなど従来の指標ではなく「富」に着目し、各国の経済成長や持続可能性を測っている点にある。「富」を自然資本(森林、鉱物等)、人的資本(生涯所得)、生産された資本(建造物、インフラ等)、そして対外純資産の合計と定義し、1995年から2014年にかけ141ヶ国の「富」の推移を追っている。

指標にGDPではなく「富」を採用している主な理由として、GDPは収入と生産だけを測るもので、その根底にある資産の推移を反映しないため、GDPだけに着目するのは分析のミスリードを招く可能性があること。また、一人当たりの「富」の減少は、将来的にその人が得る所得のために必要な資産が枯渇している可能性を示しているが、このような事実が各国のGDP成長率に反映されることは稀であること、を指摘している。

同報告書は、自然資本から得られた利益がインフラ、教育、保健等、人への投資並びに人的資本の増額に資するセクターに割り振られる必要性を指摘するとともに、自然資本を使い果たしてまで他の資産形成を行うことが富を増やすことになるとは限らない、と分析。今回の研究で、国民一人当たりの自然資本の価値は所得の拡大に応じて高まる傾向があり、これは従来の、開発には自然資本の枯渇がつきものという常識を覆す結果である、と世銀担当者は述べている。